タイの外資規制・外国人事業法|51%ルールとFBL・BOI【2026年】

タイで会社を設立する前に、社名や資本金より先に確認したいのが「予定する事業を、どの出資構成・許可で行えるか」です。同じ会社でも、実際に行う商品販売、仲介、コンサルティング、飲食、製造などの活動によって、外国人事業法や業種別法令の扱いが変わります。

制度確認日:2026年7月24日

先に結論

外国人事業法では、原則として外国人が資本の50%以上を持つタイ法人を「外国人」として扱います。ただし、タイ資本を50%超にすれば自動的に安全になるわけではありません。タイ人株主が実際に出資し、株主として権利を持つ実態が必要です。名義だけを借りるノミニーは違法です。

タイの外資規制を確認する5つの順番

最初から「日本側49%・タイ側51%で会社を作る」と決めるのではなく、事業内容と利用できる制度を順に確認します。

  1. 実際に行う事業活動を書き出す

    登記目的の名称だけでなく、誰に何を販売するか、在庫を持つか、仲介手数料を得るか、助言・管理を提供するか、製造・加工を行うかまで具体化します。複数の活動がある場合は活動ごとに確認します。

  2. 外国人事業法上の「外国人」に当たるか確認する

    外国人個人、タイ国外で登記された法人、外国人等が資本の50%以上を持つタイ法人などが対象です。株式比率だけでなく、会社形態と出資関係を確認します。

  3. 第1表・第2表・第3表または別法令の対象か確認する

    外国人事業法の3つのリストのほか、金融、保険、運輸、通信、観光、専門職、土地等には別の法律・許認可が関係する場合があります。

  4. 利用できる進出ルートを比較する

    実態のあるタイ資本会社、外国人事業許可(FBL)、BOI等の投資奨励に基づく証明(FBC)、条約・個別法令による例外などを比較します。

  5. 資本・許可条件・継続義務まで確認する

    設立できるかだけでなく、最低資本、事業ごとの条件、報告、会計・税務、雇用、ビザ・労働許可、事業場所まで含めて実行可能性を確認します。

会社登記と事業許可は別です

会社を登記できても、予定する事業を直ちに開始できるとは限りません。外国人事業法、業種別許認可、VAT、場所、外国人就労等を別々に確認してください。

外国人事業法の「外国人」と50%基準

タイの外国人事業法(Foreign Business Act, B.E. 2542 (1999))は、外国人による一定の事業活動を規制しています。同法の定義では、主に次が「外国人」に含まれます。

  • タイ国籍を持たない自然人
  • タイ国外で登記された法人
  • 外国人または外国法人が資本の50%以上を持つタイ法人
  • 外国人が業務執行社員・管理者となる一定のパートナーシップ
  • 上記の外国人等が資本の50%以上を持つ多層のタイ法人

一般に「51%ルール」と呼ばれるのは、この50%基準の裏返しです。タイ国籍者が資本の50%超を持つ会社は、株式比率だけを見れば外国人事業法上の外国人には該当しません。

50%未満なら規制がすべて消えるわけではない

他の法律が外国人の出資、取締役、土地、許認可等を別に規制している場合は、その法律が優先します。また、タイ人株主の出資・権利が名目だけであれば、ノミニーとして問題になります。

外国人事業法の第1表・第2表・第3表

外国人事業法は、規制対象の事業を3つのリスト、合計43業種に分けています。判断では、日本語の業種名だけでなく、実際の取引と収益の得方を照合します。

区分 位置づけ 主な扱い 代表例
第1表(9業種) 特別な理由により外国人に認めない事業 外国人の参入不可 新聞・放送、農業、天然林業、土地取引等
第2表(13業種) 安全保障、文化、環境等に関係する事業 内閣承認を伴う商務大臣の許可等 武器、国内運輸、鉱業、一定の伝統工芸等
第3表(21業種) タイ企業の競争力が十分でないとされる事業 外国人事業委員会の承認を経た許可等 会計、法律、建設、仲介、小売、卸売、広告、ホテル、観光、飲食、その他サービス等

サービス業は第3表の「その他サービス」を確認する

第3表21号の「その他サービス」は範囲が広く、個別の省令で除外されたサービスを除き、多くのサービス事業が検討対象になります。コンサルティング、IT、管理支援、仲介等は、契約名ではなく提供内容を見て判断します。

製造・輸出という呼び方だけで対象外と決めない

製造や輸出に関係する活動でも、実際には販売、卸売、小売、仲介、保守、管理、受託サービス等を併せて行うことがあります。外国人事業法のリストに直接該当しなくても、工場、製品、環境、輸出入等の別の許認可が必要な場合があります。

規制事業へ進出する主な選択肢

利用できる選択肢は、事業、出資者、投資規模、技術、顧客、場所等で変わります。以下は一般的な比較で、どの会社にも使える順番ではありません。

選択肢 基本的な考え方 主な確認 注意点
実態のあるタイ資本会社 タイ国籍者が資本の50%超を実際に保有する 出資資金、議決権、配当、取締役、署名権限 名義だけの株主は不可。他法令・許可は別途確認
FBL 第2表・第3表の規制事業について外国人事業許可を申請 事業内容、タイへの利益、技術・雇用、資本、審査条件 第1表には利用不可。許可は案件別判断
BOI等に基づくFBC 投資奨励等を取得し、対象事業の証明書を受ける 奨励対象業種、投資条件、活動範囲、報告義務 認可された活動だけが対象。全事業が自動的に免除されるわけではない
条約・個別法令等 条約または特別法に基づく例外・許可を確認 国籍、会社形態、対象事業、証明・許可 利用条件を案件ごとに確認

BOIの一般的な最低投資額は1,000万THBではない

BOIの一般的なプロジェクト承認基準では、土地代・運転資金を除く最低投資額は原則1,000,000THBです。ただし、対象業種ごとに別条件があり、知識集約型サービスでは年間人件費等を基準とする場合があります。

また、BOI認可による法人所得税免除の有無・年数は活動区分で変わります。BOIだから必ず外資100%、法人税8年免除、土地所有可という一律の説明はできません。最新の対象業種表と各社の奨励証書を優先します。

FBLは申請すれば必ず取得できる免許ではない

第2表は内閣承認を伴う商務大臣の許可、第3表は外国人事業委員会の承認を経た事業開発局長の許可が基本です。申請では、タイ経済への利益、技術移転、雇用、競争、事業規模等が検討されます。予定事業を具体化したうえで、申請可能性と代替案を確認します。

51%ルールとノミニー禁止

タイ人株主が資本の50%超を保有する会社自体は、直ちに違法ではありません。問題になるのは、タイ人株主が実際には出資せず、外国人の規制回避を助けるために名義だけを貸す場合です。

名義株主を用意するサービスは利用しない

外国人事業法第36条は、タイ人が外国人の事業規制回避を助ける目的で株式を保有する行為等を処罰対象としています。違反には3年以下の懲役、100,000〜1,000,000THBの罰金、またはその両方が科される可能性があります。

2026年は出資実態の確認が強化されている

JETROが2026年4月に報じた商務省の対策では、一定の法人登記でタイ人株主の投資実態を確認する銀行取引明細の提出が求められ、株主が正当に投資し株式代金を支払ったこと、名義人として外国人を援助していないことの書面確認も強化されています。

過去に登記した会社でも、資金の出所、株式代金の支払い、配当、議決権、契約、実際の経営関与を説明できるように資料を保管します。

経営権は「日本人取締役なら安全」と一律に判断しない

取締役、署名権限、株主総会、重要事項の決議、株式譲渡、増資、退任・死亡時の扱いは、法律、定款、株主間契約、銀行・許認可実務を合わせて設計します。「外国人取締役がいれば経営権を確保できる」「定足数を特定の比率にすれば安全」といった一律の方法は採用せず、タイ法の専門家と案件ごとに確認してください。

外資規制と最低資本の考え方

外国人事業法第14条は、外国人がタイで事業を開始する場合の最低資本を、省令で定める金額かつ原則2,000,000THB以上としています。許可が必要な規制事業については、原則3,000,000THB以上です。

区分 外国人事業法上の一般原則 別に確認すること
外資マジョリティーの非規制事業 最低資本2,000,000THB以上 省令、事業許可、会社形態、資本の払込時期
許可が必要な規制事業 最低資本3,000,000THB以上 事業ごとの計算、FBL条件、借入・報告等
タイ資本マジョリティー会社 同法上の一律最低資本なし 会社法、事業許可、外国人就労、BOI、銀行、実際の運転資金

上記は外国人事業法上の一般原則です。外国人のビザ・労働許可、BOI、工場・小売・卸売等の条件は別に計算します。資本金を「会社登記のための数字」だけで決めず、事業開始までに実際に必要な資金と整合させてください。

資本金の設計は、タイ会社設立の資本金・株主要件、費用区分はタイ会社設立費用ガイドで詳しく整理しています。

外国人事業法の見直しは「施行済みか」を確認する

商務省事業開発局(DBD)の年次報告では、外国人事業委員会が規制リストを毎年見直しています。ただし、見直し候補や提案が公表されても、必要な法律、勅令、省令が発効するまでは現在の規制が続きます。

将来の規制緩和を前提に会社構造を決めず、契約・申請時点で有効な規制リスト、除外省令、個別法令を確認してください。

タイの外資規制でよくある質問

日本人はタイ法人の株式を何%まで持てますか?

外国人事業法上、外国人等が資本の50%以上を持つタイ法人は「外国人」に該当します。ただし、外国人が持てる比率は事業、BOI、条約、個別法令等で変わります。「常に49%まで」と一律に決めず、予定事業に合わせて確認してください。

タイ人51%・日本人49%なら、どの事業でもできますか?

いいえ。外国人事業法上の外国人に該当しない場合でも、業種別法令、許認可、土地、専門職、取締役、事業場所等の規制が関係する場合があります。タイ人株主の出資と権利に実態があることも必要です。

知人のタイ人に名義だけ借りてもよいですか?

できません。出資や株主権の実態がなく、外国人の規制回避を助けるための名義株主はノミニーとして処罰対象になり得ます。

BOIを取れば外資100%にできますか?

認可された活動では外国人持株比率の制限が緩和され、FBCを取得できる場合があります。ただし、第1表、他の法律、活動別条件、BOIが個別に定める条件が優先します。

BOIには1,000万THBの資本金が必須ですか?

一律ではありません。一般的な最低投資額は土地代・運転資金を除き1,000,000THBですが、活動ごとに別条件があります。知識集約型サービスでは年間人件費等を基準とする場合もあります。

FBLには最低資本がいくら必要ですか?

外国人事業法の許可が必要な事業は、同法第14条上、最低3,000,000THBが原則です。省令・事業内容・許可条件による計算があるため、申請前に個別確認してください。

会社登記にはどのくらい時間がかかりますか?

会社名、株主、資本金、所在地、書類が固まった後の登記だけなら短期間で進む場合があります。一方、外資規制、FBL・BOI、タイ人株主の資金証明、業種許可等を含めると期間は大きく変わります。タイ会社設立の手順も参照してください。

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一次情報・参考資料

本記事は一般的な情報整理を目的としており、法的助言ではありません。外国人事業法、規制リスト、省令、BOI条件、業種別法令、許認可、最低資本、必要書類、当局運用は、事業内容・出資構成・申請時期等で変わります。実際の会社設立・契約・申請では、最新の公式情報とタイ法の専門家による案件別確認を優先してください。

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