タイの社会保険|雇用主の登録・保険料・納付期限【2026年】
タイで従業員を雇用すると、給与計算だけでなく、社会保障基金(Social Security Fund:SSF)と労災補償基金(Workmen’s Compensation Fund:WCF)の登録・申告・納付が必要になります。外国人が経営する会社でも、従業員の国籍だけで加入要否を決めることはできません。
制度確認日:2026年7月24日
一般的な第33条の被保険者について、従業員と雇用主の負担率は原則それぞれ賃金の5%です。2026年1月から算定上限賃金は月17,500THBとなり、月給17,500THB以上の場合の負担上限は従業員875THB、雇用主875THBです。登録・適用除外・臨時の料率軽減は会社と従業員の状況により変わるため、最新のSSO運用を確認してください。
タイの社会保険料率と上限【2026年】
会社員などを対象とする社会保障基金の第33条では、雇用主が従業員負担分を給与から控除し、雇用主負担分と合わせてSSOへ納付します。政府も法令に基づく負担を行います。
| 項目 | 2026年の一般原則 | 雇用主の確認 |
|---|---|---|
| 従業員負担 | 賃金の5%、月875THBまで | 給与から正しく控除 |
| 雇用主負担 | 賃金の5%、月875THBまで | 会社費用として同額を負担 |
| 算定上限賃金 | 月17,500THB | 上限超過分には通常5%を掛けない |
| 納付 | 原則、控除月の翌月15日まで | 申告データと支払額を一致させる |
給与別の計算例
| 月給 | 従業員負担 | 雇用主負担 | 合計 |
|---|---|---|---|
| 10,000THB | 500THB | 500THB | 1,000THB |
| 17,500THB | 875THB | 875THB | 1,750THB |
| 30,000THB | 875THB | 875THB | 1,750THB |
災害地域などを対象に、一定期間だけ保険料率が軽減される場合があります。たとえば南部9県では2025年12月から2026年5月まで第33条の雇用主・従業員負担が各3%となる特例が公表されました。通常料率と特例を混同せず、対象地域・対象月・官報での発効を確認します。
算定上限賃金は段階的に引き上げられる
2025年12月に官報掲載された省令では、第33条の算定上限賃金が3段階で引き上げられます。負担率が各5%のままであれば、最大負担額も次のように変わります。
| 期間 | 算定上限賃金 | 従業員・雇用主それぞれの最大月額 |
|---|---|---|
| 2026〜2028年 | 17,500THB | 875THB |
| 2029〜2031年 | 20,000THB | 1,000THB |
| 2032年以降 | 23,000THB | 1,150THB |
社会保険の登録と毎月の実務
SSOの案内では、雇用主は対象となる従業員を雇用した日から30日以内に雇用主・従業員の登録を行います。新しい従業員を採用したときも、原則30日以内に登録します。
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雇用条件と加入対象を確認する
雇用契約、職務、賃金、勤務場所、雇用開始日、国籍、既存の被保険者番号、適用除外の有無を確認します。役員名や契約名称だけで加入・除外を決めません。
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雇用主と従業員を登録する
雇用主登録にはSSO 1-01、従業員登録にはSSO 1-03等を使用します。外国人従業員では旅券、ワークパーミット、外国人身分証等の提出を求められる場合があります。オンライン手続きが利用できるケースもあります。
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毎月の給与と保険料を確定する
給与データを締め、加入対象賃金、従業員控除、雇用主負担を計算します。給与台帳、銀行振込、源泉税申告、社会保険申告の人数と金額を突合します。
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翌月15日までに申告・納付する
社会保障基金への従業員控除分と雇用主負担分は、原則として控除月の翌月15日までに納付します。休日、電子納付、臨時延長の扱いは各月のSSO案内を確認します。
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入退社・情報変更を期限内に届ける
退職・解雇による資格喪失はSSO 6-09、氏名・家族情報等の変更はSSO 6-10等で届け出ます。SSOの案内では、翌月15日までの届出が示されています。
給与明細、銀行支払、PND1、社会保険申告で人数・賃金・入退社日が一致しないと、修正や説明が必要になります。毎月の締め日を決め、従業員マスターを一元管理してください。
社会保障基金がカバーする主な給付
第33条の被保険者には、非業務上の疾病・負傷、出産、障害、死亡、児童扶養、老齢、失業の7分野の給付があります。実際に給付を受けられるか、金額はいくらかは、給付の種類ごとの納付期間・書類・申請期限等で決まります。
- 非業務上の疾病・負傷に関する医療給付等
- 出産給付
- 障害給付
- 死亡給付
- 児童扶養給付
- 老齢給付
- 失業給付
指定医療機関やネットワーク、緊急時の扱い、給付要件は変更されることがあります。従業員にはSSO PlusやSSO窓口で自身の納付記録・指定医療機関・給付要件を確認してもらいます。
外国人従業員と取締役の社会保険
外国籍であることだけを理由に、第33条の対象外とは限りません。SSOの英語案内でも、外国人従業員の登録書類としてワークパーミットや旅券等が示されています。タイ法人と雇用関係があり、対象となる従業員であれば登録を検討します。
「取締役だから一律に加入不可」と決めない
会社登記上の取締役・署名権者であることと、社会保険法上の従業員性は同じ判断ではありません。雇用契約、報酬の性質、指揮命令、職務、会社を代表する権限等を確認し、所轄SSOまたはタイ労務の専門家へ照会します。
外国人給与50,000THBは社会保険やWPの一律条件ではない
外国人の給与基準は、国籍、ビザ・在留延長の区分、BOI等の制度、職位などで変わります。「全外国人のWP取得には月50,000THBが必要」と一律に説明することはできません。社会保険の算定上限賃金17,500THBとも別の基準です。
外国人1名につきタイ人4名は全ケースの社会保険条件ではない
一般企業で外国人が事業上の必要性を理由に在留期間を延長する場合、政府案内では外国人1名に対し常勤のタイ人従業員4名という基準が示されています。ただし、これは主に入国管理上の在留期間延長基準であり、社会保険法そのものの一般要件ではありません。
| 論点 | 確認する制度 | 注意点 |
|---|---|---|
| タイ人4名:外国人1名 | 一般企業の事業目的の在留期間延長 | 常勤性・納付実績・事業継続性等も確認 |
| タイ人1名:外国人1名となる例 | 一定の代表事務所・地域統括・支店等 | 対象事業と当局基準を個別確認 |
| BOI・LTR・Smart Visa等 | 各投資奨励・在留制度 | 一般企業と異なる人員条件・免除・承認条件がある |
パートタイムなら必ず4名基準に数えられる、社会保険料を払えば実態がなくてもよい、といった扱いは採用しません。雇用契約、勤務、給与支払、税務申告、社会保険の記録に実態と整合性が必要です。ビザ・ワークパーミットの全体像はタイのワークパーミット必要書類・取得条件、申請支援はビザ・ワークパーミット申請サポートをご覧ください。
労災補償基金(WCF)は社会保障基金と別に管理する
WCFは業務上の負傷・疾病・障害・死亡等を対象とする基金で、保険料は雇用主が負担します。SSOの雇用主登録と同じSSO 1-01を使う案内がありますが、納付の仕組みは毎月の社会保障基金と異なります。
| 項目 | 社会保障基金(SSF) | 労災補償基金(WCF) |
|---|---|---|
| 主な対象 | 非業務上の疾病、出産、老齢、失業等 | 業務上の負傷、疾病、障害、死亡等 |
| 負担者 | 従業員・雇用主・政府 | 雇用主 |
| 納付 | 原則毎月 | 年次。初年度・精算時の期限あり |
| 料率 | 第33条は一般に各5% | 事業分類・事故実績等により決定 |
WCFについて、雇用主登録は従業員を雇い始めてから30日以内、通常年の概算保険料は1月末、前年の実際賃金の報告は2月、精算は3月という案内があります。初年度、事業分類、対象外事業、事故報告の期限を所轄SSOで確認してください。
社会保険と併せて確認する雇用主の義務
社会保険へ登録しても、雇用契約、最低賃金、労働時間、休日・休暇、源泉税、解雇等の義務が完了するわけではありません。別制度として管理します。
2025年12月から産休の雇用主負担は最大60日
労働者保護法(第9号)は2025年12月7日に施行され、産休を98日から120日に拡大し、雇用主が通常賃金を支払う期間を最大45日から60日に拡大しました。配偶者には出産支援のため15日の有給休暇が設けられ、子に重い健康上の事情等がある場合の追加15日休暇と50%賃金も定められています。
最低賃金と社会保険の算定上限は別の数字
最低賃金は都県・業種等に応じた日額で定められ、社会保険の月17,500THBという算定上限とは目的が異なります。給与設計では、最新の最低賃金、雇用契約上の月給、社会保険対象賃金を分けて確認します。
解雇は補償金だけで判断しない
解雇では勤続期間に応じた法定補償金のほか、事前通知、解雇理由、未払賃金・休暇、就業規則、手続きの公正さ等が関係します。個別案件は実行前にタイ労務の専門家へ確認してください。
タイの社会保険でよくある質問
2026年の社会保険料上限は750THBと875THBのどちらですか?
一般的な第33条では、2026年1月から算定上限賃金が17,500THBになり、従業員と雇用主それぞれの月額上限は875THBです。750THBは算定上限賃金15,000THBだった時期の上限です。
外国人従業員もタイの社会保険へ加入しますか?
外国籍という理由だけで一律に除外されません。タイ法人との雇用関係、職務、在留・就労資格、適用除外を確認します。SSOの案内では外国人登録用に旅券・ワークパーミット等が示されています。
会社の取締役は社会保険へ加入できませんか?
取締役という登記上の肩書だけでは断定できません。雇用関係、報酬、指揮命令、代表権、職務等を確認し、所轄SSOへ照会してください。
従業員は採用後いつまでに登録しますか?
SSOの案内では、雇用開始から30日以内に従業員を登録します。初めて従業員を雇う会社は雇用主登録も行います。
毎月の社会保険料はいつまでに納付しますか?
原則として給与から控除した月の翌月15日までです。休日、電子納付、臨時の期限延長がある場合は、当月のSSO案内を優先してください。
外国人1名につきタイ人4名は必須ですか?
一般企業の事業目的の在留期間延長で示される基準ですが、すべてのWP、ビザ、BOI・LTR等に一律適用される社会保険要件ではありません。会社と外国人の制度区分を確認してください。
WCFの保険料も従業員から控除しますか?
WCFは雇用主負担です。社会保障基金の毎月控除とは別に、事業分類・年次賃金・事故実績等に基づく通知と期限を確認します。
退職後や個人でタイの社会保険に加入できますか?
SSOのe-Selfサービスには、第39条の任意被保険者と第40条の被保険者に関する登録メニューがあります。加入条件と給付は従業員向けの第33条とは異なります。本記事は雇用主側の第33条実務を中心に扱うため、退職後の継続や個人加入は、手続き前にe-Selfまたは所轄SSOで最新条件を確認してください。
タイ社会保険は退職・帰国時に一律返金されますか?
「保険料の返金」と老齢一時金・年金等の給付は同じではありません。退職・帰国だけで納付済み保険料が自動返金されると判断せず、加入区分、年齢、納付期間、資格喪失後の手続きに基づき、SSOへ給付可否を確認してください。
関連するガイド
給与・税務・社会保険を同じ従業員データで管理します
給与台帳、銀行支払、PND1、社会保険、入退社届を月次で突合し、期限と担当範囲を明確にします。外国人従業員がいる場合はビザ・ワークパーミットの更新条件も分けて確認します。
一次情報・参考資料
- Social Security Office:e-Self(第33・39・40条の手続き)
- Social Security Office:被保険者・給付・医療機関情報
- タイ社会保障法 英訳(労働省掲載)
- Social Security Office:Employer / Employee Registration Guide(英語)
- タイ労働省:労災補償基金(WCF)
- タイ労働省:120日産休・雇用主60日賃金負担
- タイ労働省:南部9県の2025年12月〜2026年5月の保険料軽減
- Thailand.go.th:事業目的の在留期間延長基準
- DLA Piper:2026年からの社会保険算定上限引き上げ
本記事は一般的な情報整理を目的としており、法的・労務上の助言ではありません。加入対象、適用除外、対象賃金、保険料率、算定上限、登録・納付期限、給付要件、WCF料率、外国人の在留・就労条件、労働法上の権利義務は、会社・従業員・地域・期間・当局運用で変わります。実際の登録、給与控除、解雇その他の手続きでは、最新の公式情報と所轄当局、タイ労務の専門家による案件別確認を優先してください。


