タイでタイ人従業員を雇用する方法|社会保険・4名雇用義務・解雇ルールを2026年最新で解説

※ 本記事の日本円換算は1バーツ=約5円(2026年3月時点)で計算しています。為替レートにより変動します。
タイで会社を設立したら、次に待っているのがタイ人従業員の雇用です。日本人がタイで働くためには「外国人1名あたりタイ人4名の雇用」が必須条件となっており、避けて通ることはできません。
本記事では、タイで7年以上タイ人を雇用し、社会保険の登録・納付、そして解雇まで経験してきた筆者が、雇用に必要な手続き、社会保険の仕組み、最低賃金、解雇ルール、そして2026年最新の法改正情報まで、中小企業・個人起業家の視点でまとめます。
外国人1名につきタイ人4名の雇用が必要|WP取得の大前提
タイで外国人がワークパーミット(WP)を取得・維持するためには、以下の条件を満たす必要があります。
① 外国人1名あたり、タイ人従業員を4名雇用
② 外国人1名あたり、払込資本金200万バーツ
③ 外国人の最低給与は月額50,000バーツ以上
④ タイ人従業員の給与は地域別最低賃金以上
この「4名雇用義務」は、タイ人社員4名がその会社で社会保険に加入し、保険料を毎月納め続けることで証明されます。つまり、ビザ延長の際にも社会保険の納付実績がチェックされるということです。
| 外国人の人数 | 必要なタイ人従業員 | 必要な資本金 |
|---|---|---|
| 1名 | 4名 | 200万バーツ |
| 2名 | 8名 | 400万バーツ |
| 3名 | 12名 | 600万バーツ |
スモールスタートの場合、タイ人4名の雇用は大きなハードルに感じるかもしれません。ただし、4名全員がフルタイムの正社員である必要はなく、パートタイムやアルバイトでも社会保険に加入していれば条件を満たせます。なお、名義だけ貸すダミー従業員を斡旋する業者もありますが、近年は入国管理局や労働局による立ち入り検査が増えており、リスクが高いためおすすめしません。資本金の詳細は「タイの会社設立と資本金」をご覧ください。
タイの最低賃金|2026年最新の地域別日額
タイの最低賃金は地域(都県)別に日額で定められています。バンコクが最も高く、地方に行くほど低い傾向があります。タイ人従業員の給与は、勤務地の最低賃金以上に設定する必要があります。
| 地域 | 日額(バーツ) | 月額目安(×26日) |
|---|---|---|
| バンコク・周辺県 | 370バーツ | 約9,620バーツ |
| チョンブリ・プーケット等 | 363〜370バーツ | 約9,440〜9,620バーツ |
| 地方(最低ライン) | 337バーツ〜 | 約8,760バーツ〜 |
※ 最低賃金は政府の方針により定期的に見直されます。最新の数字はタイ労働省の発表を確認してください。タイの最低賃金は近年上昇傾向が続いており、人件費の計画は余裕を持って立てることをおすすめします。
タイの社会保険制度|SSFとWCFの2本柱
タイの社会保険は社会保障基金(SSF)と労災補償基金(WCF)の2つの基金で構成されています。従業員を1名以上雇用する事業所は、社会保険への加入が法律上義務付けられています。
社会保障基金(SSF)の概要
SSFは健康保険・雇用(失業)保険・老齢年金の3つをカバーする基金です。保険料は給与の5%を労使がそれぞれ負担し、政府も一定割合を拠出します。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 保険料率 | 給与の5%(従業員負担)+5%(会社負担)=合計10% |
| 算出上限賃金 | 17,500バーツ/月(2026年1月〜引き上げ。従来は15,000バーツ) |
| 保険料の上限 | 従業員負担:最大875バーツ/月、会社負担:最大875バーツ/月(2026年〜) |
| カバー内容 | 健康保険(傷病・出産・心身障害・死亡)、雇用保険(失業手当)、老齢年金 |
| 加入対象 | 15歳以上60歳未満の全従業員。国籍不問。ただし取締役として登記されている場合は適用除外 |
労災補償基金(WCF)の概要
WCFは業務上の災害や疾病に対する補償をカバーします。保険料は会社のみが負担し、業種によって料率が異なります(0.2〜1.0%)。サービス業のように労災リスクが低い業種では0.2%程度です。
日本人であっても、Bビザ・WPを取得して従業員(労働者)の立場で働く場合は社会保険への加入義務があります。ただし、会社の取締役として登記されている場合は適用除外となり、加入義務はありません。一般の社員として加入した後に取締役になった場合は、加入を継続することができます。
社会保険の登録手続き|従業員を雇ったらすぐやること
初めて従業員を雇用した際は、雇用日から30日以内に社会保険事務所(SSO)への登録が必要です。登録後は毎月15日までに前月分の社会保険料を申告・納付します。
SSO登録時に従業員は指定病院を1か所選びます。社会保険の健康保険は、この指定病院でのみ無料で診療を受けられる仕組みです(民間医療保険とは別)。
また、ビザ延長の際には社会保険の納付実績と、タイ人従業員の所得税申告(PND1)の提出が求められます。これにより、タイ人4名の雇用義務が本当に満たされているか、給与が最低賃金以上かが確認されます。
📝 筆者の実体験
筆者の会社では社会保険の登録・納付を含め、給与計算・源泉徴収・社会保険の月次申告はすべてローカルの会計事務所に任せています。自分でやろうとするとタイ語の書類やオンラインシステムとの格闘になるため、設立時から専門家に委託するのが現実的です。月次経理の一環として対応してもらえるケースが多いです。
タイの解雇ルール|補償金テーブルと注意点
タイで従業員を解雇する場合、勤続年数に応じた解雇補償金の支払いが法律で義務付けられています。これは日本の解雇とは大きく異なるポイントです。
解雇補償金テーブル(労働者保護法第118条)
| 勤続年数 | 解雇補償金(最終賃金ベース) |
|---|---|
| 120日以上〜1年未満 | 30日分 |
| 1年以上〜3年未満 | 90日分 |
| 3年以上〜6年未満 | 180日分 |
| 6年以上〜10年未満 | 240日分 |
| 10年以上〜20年未満 | 300日分 |
| 20年以上 | 400日分 |
なお、定年退職の場合も解雇と同じ扱いとなり、補償金の支払い義務があります(2017年改正で明文化)。タイの法定定年は就業規則に規定がない場合60歳です。
解雇補償金が不要なケース(第119条)
以下の非違行為に該当する場合は、解雇補償金の支払いが免除されます。
① 雇用主に対して不正行為や故意の犯罪を行った場合
② 故意に雇用主に損害を与えた場合
③ 過失により重大な損害を与えた場合
④ 就業規則違反で書面による警告を受けた後に再び違反した場合(重大な場合は警告不要)
⑤ 正当な理由なく連続3日間無断欠勤した場合(休日を挟んでも連続とみなされる)
⑥ 最終判決で懲役刑を科された場合
解雇予告について
タイの解雇予告は「1給与支払い期間前まで」が原則です。月給制であれば、通常は1か月前の予告が必要です。予告しない場合は、予告期間分の賃金を支払うことで即時解雇が可能です(解雇補償金とは別途)。
📝 筆者の実体験
筆者もタイ人従業員を解雇した経験があります。経験者として言えるのは、解雇は雇用以上に慎重な対応が必要だということです。タイの労働者保護法は従業員側に手厚い設計になっており、手続きを間違えると労働裁判に発展するリスクがあります。解雇を検討する際は、事前に労働法に詳しい専門家に相談することを強くおすすめします。
雇用にかかる会社側のコスト|給与以外の負担を把握する
タイ人従業員を雇用する場合、毎月の給与に加えて以下のコストが会社側に発生します。
| 項目 | 会社負担額 | 備考 |
|---|---|---|
| 社会保障基金(SSF) | 給与の5%(上限875バーツ/月) | 2026年1月〜上限賃金17,500バーツ |
| 労災補償基金(WCF) | 給与の0.2〜1.0% | 業種による。サービス業は0.2%程度 |
| 年次有給休暇 | 1年勤続で最低6日 | 有給。未消化分は退職時に買い取り義務あり |
| 病気休暇(有給) | 年間最大30日(有給) | 3日以上連続の場合は診断書が必要 |
| プロビデントファンド | 任意(加入する場合は労使折半) | 退職金積立制度。中小企業は未加入が多い |
注意すべきは病気休暇が年間30日も有給で付与される点です。日本とは大きく異なり、タイの労働法は従業員に手厚い制度設計になっています。人件費を見積もる際は、給与だけでなくこれらの付帯コストも含めて計算してください。
2025-2026年の法改正ポイント
タイの労働法・社会保険制度は頻繁に改正されます。2025〜2026年の主な変更点を整理します。
① 出産休暇が120日に拡大(2025年・労働者保護法第9版)
2025年11月に公布された労働者保護法の第9版により、出産休暇が従来の98日から120日に拡大されました。うち45日分は有給(会社負担)、残りは社会保険から手当が支給されます。
② 社会保険料算出の上限賃金が引き上げ(2026年1月〜)
2026年1月から、社会保険料を算出する際の上限賃金が15,000バーツ→17,500バーツに引き上げられました。これにより、月給17,500バーツ以上の従業員の社会保険料上限は、従来の750バーツから875バーツに増加しています。
③ 週休2日制の法制化が議論中
タイの現行法では週48時間が所定労働時間の上限ですが、週休2日制を法制化する労働者保護法改正案が議論されています。成立すれば日系企業の勤務体制にも影響が出るため、動向を注視しておく必要があります。
まとめ|タイ人雇用は「4名義務」と「解雇コスト」を最初に理解する
この記事のポイント
✅ 外国人1名につきタイ人4名の雇用がWP維持の条件(社会保険加入で証明)
✅ 社会保険はSSF(社会保障基金)+WCF(労災補償基金)の2本柱。従業員1名以上で加入義務
✅ 2026年1月から社会保険料の上限賃金が17,500バーツに引き上げ
✅ 解雇には勤続年数に応じた解雇補償金の支払いが必須(120日以上勤務で発生)
✅ 2025年の法改正で出産休暇が120日に拡大
✅ 給与計算・社会保険の申告は専門家に委託するのが現実的
✅ 雇用も解雇も、事前にタイの労働法を理解しておくことが最重要
タイ人の雇用は会社運営の根幹です。4名雇用義務から社会保険、解雇ルールまで、正しく理解した上で計画的に進めましょう。経理・労務まわりの実務は「タイで経理代行を外注すべき理由」もあわせてご覧ください。
→ タイ進出の全体像を知りたい方は「タイ進出の準備やることリスト」もご覧ください。
📋 タイで会社設立にかかる費用(内訳と依頼先別の相場)
📋 タイで会社設立する手順と流れ(登記ステップ・必要書類・期間)
📋 タイの会社設立と資本金(200万バーツの根拠・決め方・節税)
📋 タイの外資規制と外国人事業法(51%ルール・規制業種・対処法)
📋 タイのビザ・ワークパーミット取得ガイド(手続き・費用・必要書類)
📋 タイで経理代行を外注すべき理由(費用相場・業務範囲・選び方)
📋 タイの法人税・税金まるわかりガイド(税率・計算方法・申告)
📋 バンコクのオフィス賃貸ガイド(エリア別相場・契約の注意点)
タイ進出の設立から雇用まで、ワンストップでサポートします
会社設立+ビザ+WPのフルパッケージ118,000THB〜(約59万円〜)。
設立後の経理・労務まわりもまとめてご相談いただけます。

