タイのVAT(付加価値税)ガイド|7%・登録・PP30・Tax Invoice
タイの「消費税」に相当する税はVAT(Value Added Tax/付加価値税)です。法人実務では、税率だけでなく、VAT登録の要否、Tax Invoiceの発行・受領、売上VATと仕入VATの照合、PP30の月次申告を一つの流れで管理します。
制度・公式情報の確認日:2026年7月26日
一般的なVAT税率は7%で、現行の軽減措置は2026年9月30日まで延長されています。通常の課税対象となる商品販売・サービス提供の年間売上が180万THBを超える事業者は、原則としてVAT登録を検討し、基準到達後30日以内の登録が必要です。
ただし、0%取引、VAT免税取引、特定事業税の対象、輸入、国外事業者から受けるサービス等は扱いが異なります。売上金額だけで結論を出さず、取引別に判定してください。
タイのVATは日本の消費税に近い付加価値税
タイのVATは、事業者が商品・サービスの販売時に顧客から預かったVAT(売上VAT)から、仕入・経費で支払った控除可能なVAT(仕入VAT)を差し引き、原則として毎月申告する仕組みです。法人所得税が年間の課税純利益を基礎にするのに対し、VATは取引と証憑を月単位で管理します。
| 比較 | VAT | 法人所得税 |
|---|---|---|
| 主な課税対象 | 商品・サービスの取引に生じる付加価値 | 税務調整後の課税純利益 |
| 基本の管理単位 | 取引・Tax Invoice・月次 | 会計期間・中間・年次 |
| 主な申告 | PP30 | CIT 51・CIT 50 |
| 計算の中心 | 売上VAT − 控除可能な仕入VAT | 課税純利益 × 税率 − 税額控除等 |
法人税、源泉徴収税、特定事業税、関税とVATは別の税目です。同じ取引に複数の税務処理が関係することもあるため、請求書発行時と支払時の処理を分けて確認します。法人税全体はタイ法人税・申告ガイドで整理しています。
タイの一般的なVAT税率は7%
タイの法定VAT税率は10%ですが、勅令による軽減税率7%が適用されています。タイ歳入局が公表する勅令一覧では、Royal Decree No. 799により7%の適用が2026年9月30日まで延長されています。2026年10月以降の取引は、次の延長措置が公布されているかを取引前に確認してください。
| 区分 | 概要 | 仕入VATへの主な影響 |
|---|---|---|
| 7% | タイ国内の一般的な課税対象の商品・サービス | 要件を満たす仕入VATは控除対象になり得る |
| 0% | 輸出など、法令上0%が適用される取引 | 課税取引のため、要件を満たす仕入VATの控除・還付が問題になる |
| VAT免税 | 法令上VATを免除される商品・サービス・事業 | 関連する仕入VATを控除できない場合がある |
| 特定事業税 | 金融・不動産等の一定の事業に関係 | VATとは別の税目として判定 |
顧客への請求税率が0である点だけを見ると似ていますが、取引の法的区分と仕入VATの扱いが異なります。輸出、国外関連取引、免税事業を一括して「VATなし」と処理しないでください。
VAT登録は年間売上180万THBが基本基準
タイ歳入局は、通常のVAT課税対象となる商品販売・サービス提供で年間売上が180万THBを超える事業者について、原則としてVAT登録が必要と案内しています。基準に達した日から30日以内にVAT登録申請を行うのが基本です。
| 状況 | 実務上の確認 | 主な対応 |
|---|---|---|
| 年間売上180万THB超 | 課税対象売上の範囲と基準到達日 | 原則30日以内にVAT 01で登録 |
| 設立・開業準備中 | 開業予定、契約、設備、物件、仕入の証拠 | 要件を満たせば開業前の登録を検討 |
| 基準以下 | 免税事業、取引先要請、仕入VAT、任意登録の可否 | 自動的に不要とせず取引構造で判断 |
| 複数拠点・支店 | 本店・支店の登録、Tax Invoice上の支店番号 | 登録情報と証憑表記を一致させる |
タイ歳入局の登録手続マニュアルでは、一定の証拠を提出できる事業者は、事業開始予定日の6か月前から登録申請できる場合があると案内されています。開業前登録は、仕入VATを早く控除したいという理由だけで決めず、実際の事業開始予定と必要書類を確認します。
VAT登録前に整理する資料
- 会社証明・VAT登録対象となる事業内容
- 本店・支店の住所、賃貸借契約、貸主資料
- 署名権者・委任・申請担当者の資料
- 売上見込、契約、発注、設備、開業準備の証拠
- Tax Invoiceの発行方法と請求システム
- 証憑回収、月次締切、PP30作成の担当者
Tax Invoiceが仕入VAT控除の基礎になる
VAT登録事業者は、課税取引について法令に沿ったTax Invoiceを発行します。仕入側は、請求書にVATが記載されているだけで自動的に控除できるわけではなく、発行者、宛先、取引内容、日付、金額、原本性、事業関連性等を確認します。
| 確認欄 | 主な確認内容 | よくある不一致 |
|---|---|---|
| 書類の表題 | Tax Invoiceであること | 通常のInvoice・Receiptのみ |
| 売手情報 | 会社名、住所、Tax ID、本店・支店 | 旧住所、支店番号違い |
| 買手情報 | 登録名、住所、Tax ID、本店・支店 | 略称、個人名、別拠点 |
| 書類情報 | 一意の番号、発行日、取引内容 | 重複番号、日付ずれ、内容不明 |
| 金額 | 税抜額とVAT額の区分 | VAT込み総額だけ、計算差 |
Credit Note・Debit Note、前受金、返品、値引き、外貨取引、電子Tax Invoiceでは、売上VAT・仕入VATを認識する月や必要記載が変わる場合があります。通常請求書の修正だけで処理せず、元のTax Invoiceとの対応を残してください。
納付VATは売上VATから控除可能な仕入VATを差し引く
当月の売上VAT − 当月に控除できる仕入VAT = 当月の納付VATまたは控除超過額
仕入時にVATを支払っていても、事業に関係しない費用、要件を満たさないTax Invoice、法令上控除できない費用、VAT免税売上に対応する費用等は、仕入VAT控除が制限される場合があります。会計上の費用計上とVAT控除は分けて判定します。
| 項目 | 月次で照合する資料 | 主な確認 |
|---|---|---|
| 売上VAT | 売上Tax Invoice、売上帳、契約、入金 | 発行漏れ、取消、番号連続性、税率 |
| 仕入VAT | 仕入Tax Invoice、経費、支払、原本 | 宛先、支店、控除可否、重複 |
| 調整 | Credit Note・Debit Note、返品・値引き | 元取引と申告月の対応 |
| 繰越 | 前月PP30、VAT元帳、還付申請 | 前月残高と当月開始残高の一致 |
PP30は原則として毎月申告する
VAT登録事業者は、原則としてPP30(P.P.30)で月次VATを申告します。タイ歳入局の一般案内では、紙申告の期限は翌月15日です。電子申告に関する期限延長、休日、当年度の特例は、申告月ごとの公式カレンダーで確認してください。
-
売上Tax Invoiceを締める
連番、発行日、取消、Credit Note・Debit Note、税率、売上帳を照合します。
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仕入Tax Invoiceを回収する
原本・電子証憑、宛先、本店・支店、Tax ID、取引内容、支払資料を確認します。
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控除可否と申告月を判定する
事業関連性、証憑要件、課税・免税売上との関係、前月繰越を確認します。
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PP30とVAT元帳を照合する
売上VAT、仕入VAT、調整、繰越、納付・還付の各残高を一致させます。
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申告・納付・控えを保存する
提出日、受付、納付証憑、申告データ、元帳、根拠資料を月別に保管します。
VAT登録が継続している会社では、売上・仕入がない月でも申告対応が必要になるのが一般的です。「売上がないから提出しない」と判断せず、登録状態と当月の申告義務を確認してください。
国外事業者・輸入がある場合
国外事業者からタイで使用するサービスを受ける場合や商品を輸入する場合は、国内の通常仕入とは異なるVAT処理が関係します。PP36、税関での輸入VAT、電子サービス事業者の登録制度等が関係し得るため、契約主体、サービス利用地、支払先、通関資料を取引前に確認してください。
事業者のVAT還付・繰越と観光客向け還付は別制度
日本語で「タイ VAT 還付」と検索すると、旅行者が空港等で申請するVAT Refund for Touristsの情報が多く表示されます。一方、タイ法人のVAT実務では、仕入VATが売上VATを上回った場合の控除超過額について、翌月以降へ繰り越すか、要件に沿って還付を申請するかを検討します。
| 区分 | 主な対象 | 確認する資料 |
|---|---|---|
| 法人のVAT繰越・還付 | VAT登録事業者の控除超過額 | PP30、VAT元帳、Tax Invoice、契約、支払、輸出証拠等 |
| 観光客向けVAT還付 | 制度要件を満たす旅行者の対象購入 | 店舗・購入・出国に関する指定書類 |
法人の還付申請では、売上・仕入・在庫・契約・支払・輸出等の資料確認を受けることがあります。資金繰りだけで還付を選ばず、証憑の完全性、過去申告との整合、確認対応の担当者を準備します。
毎月のVAT実務チェックリスト
- VAT登録証と本店・支店情報が現在の登記・住所と一致している
- 売上Tax Invoiceの連番、発行日、税率、取消を確認した
- 仕入Tax Invoiceの宛先、Tax ID、支店、原本性を確認した
- 7%・0%・VAT免税・特定事業税を取引別に区分した
- Credit Note・Debit Noteを元取引と対応させた
- 国外サービス・輸入・輸出の証拠を分けて保管した
- 売上VAT・仕入VAT・前月繰越をVAT元帳と照合した
- PP30の申告・納付・受付控えを月別に保存した
よくあるミス
登録基準到達日の見落とし
年末に年間売上だけを確認し、年度途中に180万THBを超えた日と30日の期限を把握していない。
支店番号・住所の不一致
Tax Invoiceの本店・支店、Tax ID、旧住所が登録情報と一致せず、仕入VAT控除の確認が必要になる。
InvoiceとTax Invoiceの混同
VAT額が書かれていても、法令上必要なTax Invoiceとしての要件を満たしていない。
0%と免税の混同
顧客への請求VATが0という結果だけで、仕入VATの控除可否まで同じと判断する。
VATと源泉税の相殺
同じ支払いに関係する別税目を、請求書・支払・申告の各段階で正しく分けていない。
会計データとの残高差
PP30、VAT元帳、総勘定元帳、納付・還付残高が月をまたいで一致しない。
タイVATのよくある質問
タイの消費税は何%ですか?
タイの消費税に相当する一般的なVAT税率は7%です。タイ歳入局の勅令一覧では、現行の7%適用は2026年9月30日まで延長されています。それ以降は最新の延長措置を確認してください。
タイのVAT登録基準はいくらですか?
通常のVAT課税対象となる商品・サービスの年間売上が180万THBを超える場合が基本基準です。免税事業、特定事業、任意登録、事業開始前登録等があるため、売上だけで最終判断しません。
180万THBを超えてからいつまでに登録しますか?
タイ歳入局の案内では、基準に達した日から30日以内が基本です。到達日を把握できるよう、月次だけでなく累計の課税対象売上を管理してください。
VAT登録は開業前にもできますか?
一定の事業開始証拠を提出できる場合、開始予定日の6か月前から申請できることがあります。物件、契約、設備、発注等の資料と実際の開始予定を確認します。
PP30の申告期限はいつですか?
タイ歳入局の一般案内では、紙申告は翌月15日が基本です。電子申告の期限延長、休日、当年度の特例は申告月の公式カレンダーで確認してください。
売上がない月もPP30は必要ですか?
VAT登録が継続している事業者では、取引がない月も申告対応が必要になるのが一般的です。登録状態、廃業・休止、当月の取引を確認して判断します。
仕入先のInvoiceにVATがあれば控除できますか?
VATの記載だけでは足りません。Tax Invoiceとしての必要記載、発行者・買手の登録情報、取引内容、事業関連性、控除制限、申告月を確認します。
0%取引とVAT免税は同じですか?
同じではありません。0%はVAT課税取引の税率区分で、VAT免税は法令上VATを免除される取引です。仕入VATの控除・還付への影響が異なります。
VAT還付は観光客向けの制度ですか?
観光客向け還付とは別に、VAT登録事業者の仕入VATが売上VATを上回った場合の繰越・還付があります。法人の還付ではPP30、VAT元帳、Tax Invoice、取引・支払・輸出等の証拠を確認します。
月次経理代行にVAT申告は含まれますか?
会社の登録状況、取引量、対象申告、仕入・売上の区分、証憑状態を確認し、見積書で月次範囲を決めます。VAT登録・遡及・修正・還付対応は通常月次と分ける場合があります。
関連するガイド・サービス
登録・請求・月次申告を一つの運用にします
事業内容、年間売上、VAT登録、本店・支店、売上・仕入、Tax Invoice、過去のPP30を確認し、現在の不足資料と次の期限を整理します。
一次情報・参考資料
本記事は一般的な情報整理を目的としています。VATの登録要否、税率、0%・免税・特定事業税の区分、Tax Invoice、仕入VAT控除、申告期限、還付、国外取引の扱いは、事業・取引・証憑・登録状況・当局運用により変わります。実際の登録・申告では最新の公式情報と案件別の確認を優先してください。


